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第10話 見ている人

Auteur: みだん
last update Date de publication: 2026-09-17 03:38:35

水曜日は久遠くんです。

行き先も聞かれませんでした。

朝、玄関を開けたら立っていて、「図書館」とだけ言われました。

市立図書館は、自転車で二十分ほどの川沿いにあります。

古い建物で、冷房がよく効いていて、平日の午前中はほとんど人がいません。

並んで漕いでいる間も、久遠くんは何も言いませんでした。

ただ、信号のたびに速度を落として、私が追いつくのを待ちました。

少し前をいこうとするのは、自転車でも同じでした。

私は、ここ三日ほど眠れていませんでした。

目をつぶると、祭りの夜のことばかり思い出すのです。

鈴の緒が鳴ったこと。

二人の声が重なったこと。

和樹くんの指が冷たかったこと。

あの夜に戻れたら、と考えます。

何度も考えます。

願いなんて口に出さなければよかった、せーの、なんて言わなければよかった。

でもそれは、和樹くんが二十歳まで生きられないということでもあるのです。

どこまで戻っても、正しい道がありません。

それを考え始めると、朝になります。

「三日前からだな」

閲覧席に座ってすぐ、久遠くんが言いました。

「何がですか」

「まばたきが増えてる。あと、目をこする回数」

私は手を止め
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